資格試験の王道の勉強方法
筆記試験は、それ以外の形態(口述・面接や実技など)より相対的に、事前の学習で合格確率を高めやすい試験方法だといえます。
ただし、自分にとって最大効率を発揮できる適切な勉強法を実践した場合にだけ言えることですが。
筆記試験の正攻法は、制限時間の中で、合格水準を超える得点を挙げる実力をつけることにあります。
USCMA試験に限らず、一般論を申し上げれば、Output を意識した勉強法を主体とすることです。
つまり、むやみに教科書を読む(インプット)だけでは、いわゆる「得点力」を付けることはできないので、できるだけ、数多くの練習問題(アウトプット)をこなして、得点力を身につけることが最適の勉強方法というものです。
筆者はこれを否定しませんが、むやみに、練習問題を繰り返しても、いつかは、自分の得点力の勉強時間当たり伸び率が逓減(飽和)して、いくら勉強時間を追加しても、それ以上、得点力が上がらない時期が必ず訪れることになります。
ひとつの方法論を妄信して、それだけやれば大丈夫、と自分に言い聞かせて勉強を続けるのは、心の安寧のためには効果絶大ですが、本当に合格確率を上げられるかは疑問です。
常に、Comfortable な状態というのは、自分がチャレンジしていない、守りの姿勢になっているといっても過言ではありませんから。
今回の記事は、そうした、飽和状態(”saturation”、筆者は心の中で、「もうそろそろ、サチュってきたかな」とつぶやくことが多かったのですが)を乗り越えるための勉強法の解説になります。
英語で試験を受けること、試験を受けた後のこと
まず、日本語を母国語として、英語でUSCMA試験を受験することを目指す人にとって、英語で試験勉強する、というのが最初の高いハードルのひとつといえます。
筆者も、英語はこれまでの人生で、はっきり言って苦手意識を持っており、それを克服するために、USCMA試験を目指しました。
現在進行形で、USCMA試験の勉強をしている人に、試験合格後の自分の状態をできるだけ具体的に想像してください、というのは酷な話かもしれませんが、合格後のイメージをクリアに持つことは、大変な勉強時間中に、モチベーションを維持するのにも役立ちます。
合格後の自分を想像すると、おそらく、英語を使って、会計やマネジメントの仕事をするイメージが頭に思い浮かぶのが一般的でしょう。
では、その時に、英文資料を読んだり、英語でプレゼンテーションをしている際に、「数字」や「単位」をどのように発音しているでしょうか?
筆者が、奇異に感じたのは、専門学校の講師のWeb講座を受講しているときでした。
講師の方が、英文のテキストをまず英語で読みながしてから、日本語で解説する、という流れで講義が進んでいきます。
この時、つらつらと英語(もちろん日本語アクセントで)で本文をお読みになっているのに、突然、数字と単位を日本語で発音して、そのまま何事もないようにテキストを読み続けられたのです。
具体例を挙げると、
The total standard cost of the actual mix is calculated as follows:
Beef $2.00 * 2,54 lb. = $ 5,094.00
という英文があったとしたら、
The total standard cost of the actual mix is calculated as follows:
Beef 2ドル かける 2 てん 54 ポンド イコール 5せん9じゅう4ドル
と読み上げるのです。
USCMA試験は時間制限との戦いであることは百も承知しています。ですので、日本語を母国語としている人は、数字と計算と単位を英語読みしていては、時間がかかるので、そこは思い切って日本語で脳内処理を済まして、時間を稼ぐ、という方法論にも一理あることは認めます。
しかし、USCMA合格後、USCMA資格を活かして仕事をする時のイメージとして、数字と計算を日本語で発話してて、英語使いのビジネス相手に太刀打ちできるものでしょうか?
”急がば回れ”
確かに、筆者は、百と千と(十)万、hundredと thousand と a hundred thousand (十万) の読み分けを最後まで苦手としていました。
後の章でも言及しますが、英文を読む際に、脳の使い方として、英語と日本語を混ぜてしまうと、英文を読むスピードがいつかはそれ以上短くならないときが早晩やってきます。
それが、合格力が十分ついた後なら害はないのですが、合格力もおぼつかない時期に、読解スピードがサチュってしまっては、目も当てられません。
ここは、習慣づけるために、数字や四則演算は、心を鬼して「英語読み」を徹底されることをお勧めします。最終的には、英語はそのまま英語で読んでいった方が、読解スピードは練習した分だけ早くなります。
多読で英語脳の作り方
前章で、数字・単位・計算は英語読みを徹底することの大切さを訴えました。
これは、一般的に流布している通説通りの定石ですが、短期勝負の試験の早期合格という目的達成や、自分の英語脳のレベルと適性の個人差の存在から、定石から外れた戦法を選択したほうが、良いケースもあり得ます。
人間の脳も含めて、情報処理の形式を普遍的に一般化すると、
Input ⇒ Process ⇒ Output
となります。
USCMA試験は、全て英文で記載されており、Multiple choice は、英文で記述された選択肢から正解を選ぶ、essay は、ズバリ、英文で回答を記述する必要があります。
つまり、
Input (英語) ⇒ Process ⇒ Output (英語)
となります。
ここで、英語を母国語としない受験者が、Process を英語でやり切れるかが大きな問題となります。
まず、下記に英語以外の母国語(ここでは日本語を想定)と英語の使い分けを類型化します。
Input | Process | Output | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | E | ⇒ | J | ⇒ | E | → | E | ⇒ | J | ⇒ | E | → | E | ⇒ | J | ⇒ | E |
2 | E | ⇒ | J | → | J | → | J | ⇒ | E | ||||||||
3 | E | ⇒ | J | → | J | ⇒ | E | → | E | ||||||||
4 | E | → | E | ⇒ | J | → | J | ⇒ | E | ||||||||
5 | E | → | E | ⇒ | J | ⇒ | E | → | E | ||||||||
6 | E | ⇒ | J | ⇒ | E | → | E | → | E | ⇒ | J | ⇒ | E | ||||
7 | E | ⇒ | J | ⇒ | E | → | E | → | E | ||||||||
8 | E | → | E | → | E | ⇒ | J | ⇒ | E | ||||||||
9 | E | → | E | → | E |
日本語を用いて(脳内で)問題を解く場合、上表では、Process の真ん中に「J」の文字が入ります。当然、問題文と回答は英語(E)のため、どこかで必ず「E⇔J」の読み替え(翻訳)が必要になります。
文字通り、「英語脳を鍛える」という表現は、上表のパターン「9」を目指すことになります。
非常に簡単な正誤問題や、単純な足し算で回答できる場合には、パターン「9」でも、ストレートで英語だけで思考を回して答えを導くことができるかもしれません。
しかしながら、問題の難易度によって、残念ながら、パターン「1~8」のいずれかを選択せざるを得ない状況が生まれます。
その場合、パターン「1」が最も翻訳に時間と手間をかける方法なので、一般的は最も時間がかかると予想されます。
したがって、問題演習やテキストの読込の段階で、自分の脳がどのパターンで問題を解いているのかを意識することが、事前学習の肝のひとつになるといえます。
ちなみに、筆者の場合、Multiple choice の簡単な正誤問題はパターン「5」、計算問題はパターン「3」、文章題はパターン「2」、Essay はパターン「4」、どうしようもない難問は問題形式を問わずパターン「1」でした。
事前学習の中で、解答の際、自分の脳内の言語パターンがどれに当たるかを意識し、翻訳に時間がかかるか、英語で処理する方が時間がかかるか、効率を自分で測定しながら、問題の性質ごとに脳の言語パターンを使い分けることを意識していました。
アメリカ人(出題者)の思想的背景を汲む
Part 2 Section C における経済学関連の出題に限らず、自由主義経済、市場優先主義、ホモ・エコノミクス(homo economicus)の基本思想が出題意図を見事に貫いています。
経済合理性を徹底的に追求し、特にその姿勢は、「利回り計算」に表れます。
lock box 導入の固定費が便益を上回るか、売上債権のファクタリングの利回り計算に固定・変動の各種コストを事後事前にどのように反映させるか、複数製品ラインの配合差異と歩留差異がいくらになるか、希薄化後EPSがいくらになるか等、ひりひりする計算問題ばかりが頻出します。
ひたすら問題演習を繰り返し、ひとつひとつの計算パターンを身につけることが肝要ですが、どうしても頭に計算手法が染み入らない場合があります。
そういう時は、カッカした頭をクールダウンさせて、一歩引いたところから、「なぜ、アメリカ人はこんな計算をしたがるのだろう?」と考えてみましょう。相手の立場に立って、「資本主義経済の精神を貫徹させるために、利回り計算は資本効率を高めるために最も留意すべきものである」と考えてみてから、もう一度問題文に当たると、今度は理解度が格段に違ってくるかもしれませんよ。
(参考)各種利回り(採算)計算の共通ポイント
- 投資額(インプット)
- リターン
- リターンを生むために必要なコスト(リターンからマイナスするもの全て、資本コスト含む)
- リスク(期待収益率、利息、割引率など、投資額の資本コストを算出するもの)
暗記物のニーモニック(語呂合わせ)の功罪
USCMA試験には、USCPA試験と共通の、英語圏ではおなじみの mnemonic(ニーモニック)による語呂合わせで、用語を覚えやすくしています。
例えば、Part 2 Section D リスクマネジメント では、COSOフレームワークを暗記しておくと、いい得点源となるかもしれません。
いきなり、「20 principles 20の原則」を覚えるのは至難の業なので、
DOVES SOAR VAPIR SIR TIP.(鳩さんたちが急上昇したのは蒸気のせいでそれを見たお客がチップをくれた???)
と、20の基本原則のあるキーワードの頭文字をつなげて、文章(ちょっと文意は怪しいですが、、、)で覚えるには便利です。
しかし、昨今の出題例では、単にこうした語呂合わせで暗記したキーワード自体を問うものは少なくなってきている印象を受けています。
Multiple choice でも、Esssay でも、キーワードの説明・記述の間違い探しや、理由付けを問う問題が増えている印象です。
したがって、こうした暗記物は、その条項の順番と共に、意味があるので、最初はニーモニックを頼って全件記憶した上で、次ステップとして、ストーリーで内容を記憶していく必要があると思います。
例えば、ERMのCOSOフレームワークから、「3. Performance」は、「VAPIR」なのですが、項番がバラバラになっています。
正しくは、
- Identifies risks
- リスクを特定する
- Assesses severity of risk
- リスクの重大性を評価する
- Prioritizes risks
- リスクの優先順位付けをする
- Implements risk responses
- リスク対応策を実施する
- Develops portfolio view
- ポートフォリオの視点を策定する
「特定したリスクの重大性をそれぞれ評価して、対応のための優先順位付けをしてから、その対応策を実際に実施してみる。全体としては、ポートフォリオ視点からの整理・レビューをできるように構成しておく」
ポートフォリオ視点からの整理がなされているから、次の「4. Review & Revision」において、リスク対応施策の結果をレビューすることができるのです。
このように、語呂に合わせた入れ替わった順序では、ストーリー(因果関係や時間的前後関係)が問われた時に回答するのが難しくなってしまいます。
語呂合わせは最初は便利ですが、得点力を上げるためには、地道に理解力をストーリーで身につけることが必要になってくるかもしれません。
とにかく試験時間は短い
中国語による試験を除いて、英語で受験する人で日本語を母国語とする方は、とにかく試験時間が足りないことに注意する必要があります。
ただでさえ、専門知識と専門技能が問われる試験なのに、出題言語が母国語でないのです。
折角専門知識・技能が備わっていても、問題文の意味が把握できなかったり、解答に時間をかけすぎて、回答欄への記載が間に合わないと、当然不合格になります。
そこで、短期合格のためには、受験テクニックを多少なりとも身につける必要性があります。
これは、USCMA合格後にも通用する技能ではないかもしれませんが、短期合格のためには背に腹は代えられないものとして甘受せざるを得ません。
筆者が時間不足を解消するために、問題演習や事前学習で心掛けていたことは次の3つです。
- 演習問題や英文テキストの読込(いわゆる多読)により英文を読むスピード自体を上げる
- 問題の難易度や出題領域を一目で見極める判断力を付ける
- 必勝パターン、人よりできる分野、すなわち得点源を作る
ここまで、USCMA短期合格のための勉強のコツをまとめてきました。
- 数字・単位・四則演算(計算)も含めて英語で音読・黙読する
- インプット⇒処理⇒アウトプットの一連の情報処理で日英の翻訳ポイントを自覚する
- 資本主義経済の基本思想を理解する
- 語呂合わせによる暗記よりストーリーによる理解を促進する
- 試験時間不足の対策を心がける
少しでも、皆様の短期合格のお役に立ててれば幸いです。
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